シントピコンの序文その他諸々を和訳してみた

kozakashiku.hatenablog.com

  のおまけということで、シントピコンの序文その他諸々について和訳してみた。丁寧な訳ではないが、シントピコンの雰囲気が掴めるのではないかと思う。意味が取りにくい場合は補足を付けた。

 

 

序文(Introduction) 

「Great Books of the Western World 1 The Syntopiocn:Ⅰ」Second Edition,  Encyclopædia Britannica, Inc. p xiii-xvi

 シントピコンに充てられているGreat Booksの1、2巻は、ユニークな索引を構成している。「シントピコン」という言葉は、「トピックの集合」を意味しており、この1,2巻には、102のアイデア=大項目の中に3000近くのトピック=小項目が含まれている。シントピコンの目的は、西洋世界の古典・名著に対して、トピックによる索引を提供することだ。シントピコンの作成の根底にあるのは、ある共通のテーマや問題についての議論において、Great Booksに収録されている全ての作品が全体的な統一性を持っているという信念である。そのような統一性は、Great Booksに収録されている全ての作品が西洋の伝統に連なっているがゆえに存在する。

 Great Booksのシントピカル・リーディングによって辿ることのできる議論の連続線は、3千年にわたって西洋文明を貫く議論の連なりの、主要な連続線である。時代を超えた古典・名著たちの偉大なる会話(Great Conversation)は生きた有機体であり、シントピコンはその構造を明確に示すべく作られた。シントピコンが示そうとしているのは、あらゆる時代の人間に関係し、人類の思弁的な探求と実際的な利益の全範囲をカバーするテーマについて、西洋文明における偉大な知性たちの残した作品たちの対話(Conversation)の連鎖の数々である。シントピコンは、それが達成できている限りで、西洋の統一性と連続性を明らかにしている。

 

102のアイデア 

 読者に知っておいてほしいのは、私たちは手前勝手に考え出した102のアイデア=大項目とトピック=小項目を、Great Booksに強引に当てはめているわけではない、ということだ。それどころかこの102のアイデア=大項目とトピック=小項目は、大規模な学者グループが、作品を集中的に読み込み、再読することによって整理されたものだ。言い換えると、編集者の側で、Great Booksから読み取ることのできる情報を、事前に易しく言い換えたり、単純化したりする作業は行わなかった。目的はただ一つ、アイデアに興味のある人に対して、Great Booksへの容易なアクセスを提供することだけだった。一度アイデアによる索引の作成が決定すると、他のスタイルの索引にかえることはできなくなった。そして、アイデアを利用できるようにするために、各参照指示をぶら下がらせることができるような、トピックとサブトピックの見取り図が必要になった。

 なぜ90個や100個、110個ではなくて、102個のアイデア=大項目なのか? この102という数字はマジックナンバーではないし、また西洋思想の歴史の中にはこれほどの数のアイデアしか含まれてないということを示すために選ばれた数字でもない。約2000の用語を含む「用語目録」(Inventory of Terms)の存在を知れば、そうでないということはすぐに分かってもらえるだろう。102という数字は、シントピコン作成のための編集上の判断を反映しているに過ぎない。その判断は、作品を注意深く賢明に読み込んだ上で、西洋社会における主要なモチーフについての一般的見解とも合致するようにして下されたものである。Great Booksに収録されている作品の内容を考えると、90個や110個ということもあり得ただろう。

 

シントピコンの構成

 シントピコンは3つのパート———102のアイデア=大項目の章、「追加文献総合リスト」(Biography of Additional Readings)、「用語目録」(Inventory of Terms)———で構成されている。102の章と「用語目録」は共に、読者が各アイデアの文脈の中で、何世紀にもわたる偉大なる対話に参加するためのツールである。

 102の章は、シントピコンの心臓部(そして大部分)を構成している。各章は5つの部分———「導入エッセイ」(Introduction)、「トピックの見取り図」(Outline of Topics)、Great Booksに収録された作品への参照である「シントピコン索引」(References)、他のアイデアとの「相互参照」(Cross-Reference)、「追加文献リスト」(Additional Readings)———に分かれている。

 「導入エッセイ」(Introduction)は、アイデア=大項目の性質と範囲を定義しており、アイデア=大項目を構成する各トピック=小項目へのガイドとして機能する。これは、シントピコン索引で参照指示される箇所に含まれている偉大なる会話を予感させるものである。

 「導入エッセイ」のすぐ後に、アイデア=大項目の内部構造を示す「トピックの見取り図」(Outline of Topics)があり、アイデア=大項目を構成するトピック=小項目が示されている。トピック=小項目は、シントピコンの基本的な構成単位である。 1つのアイデア=大項目におけるトピック=小項目の平均数は30個だが、実際には6個(「運命」)から73個(「神」)まで、さまざまである。

 「シントピコン索引」(References)では、トピック=小項目と共に、Great Booksに収録された作品への参照指示が示されている。そこには、3巻から60巻までの各巻について、Great Booksに収録されている順序で参照指示が並んでいる。時系列で並べられた作品たちを吟味することで、読者はそのトピックについての思考の歴史的展開を追うことができる。聖書への参照がある場合は、常に各トピックの先頭に置かれている。なお聖書については、誰もが受け入れる決定版が存在しないため、Great Booksには含まれていない。 

 読者は、いくつかのアイデア=大項目の章のいくつかのトピック=小項目には、参照指示が全く含まれていないということに気づくだろう。このようなトピック=小項目は、それらの下に分析的にグループ化された他のトピック=小項目の見出しとして機能している。つまりメイントピックは、サブトピックをぶら下げるためのフックとして機能しているのである。「7存在」[8存在と知識]や、「76量」[5物理量]、「90国家」[2国家の一般理論]が、その例だ。

補足:分かりにくいのでちょっと解説。各大項目=アイデアの内部構造を示した「トピックの見取り図」は、たくさんのトピックたちで構成されている。例えば「2動物」というアイデア=大項目ならば、[1動物の性質に関する一般理論]、[2動物の分類]、[3動物の構造]というようなメイントピックで構成されていて、更にメイントピックである[1動物の性質に関する一般理論]の下に[1a動物の特徴:動物の魂]などのサブトピックがぶら下げられている(サブトピックがぶら下がっているメイントピックもあれば、ぶら下がっていないメイントピックもある)。ものによっては、サブトピックの下に更にサブサブトピックがぶら下がっていたりする(例えば[1動物の性質に関する一般理論]のサブトピックである[1a動物の特徴:動物の魂]の下には、[(1)動物の感覚:その程度と分化]、[(2)動物の記憶力、想像力、知性]といったサブサブトピックが連なっている)。これらメイントピック、サブトピック、サブサブトピックについて言及している、Great Books収録作品内の文章を、ページ番号で参照指示しているのがシントピコン索引である。

 メイントピックが単体の(つまりその下にサブトピックがぶら下がっていない)ときは、メイントピック自体についての参照指示が記されているが、メイントピックの下にサブトピックがぶら下がっているときは、メイントピックはサブトピックを束ねるためのものに過ぎないので、メイントピック自体についての参照指示はない、ということをここでは言っている(分かりやすくなってないか…)。

  「相互参照」(Cross-References)は、各章の4番目の部分である。「相互参照」では、類似・関連する話題を扱っているアイデア=大項目やトピック=小項目を参照指示している。つまり、あるアイデア=大項目を、他のアイデア=大項目やトピック=小項目と関連づけることによって、それらの相互関係を示すものである。

 各章の最後の部分は、「追加文献リスト」(Additional Readings)である。Great Booksにはたくさんの、そして多様な作品が収録されているが、西洋文明の思想に重大な貢献をした著者や作品が挙げ尽くされているわけではない。追加文献リストは、各アイデアに関連する、Great Booksには収録されなかった作品のリストを提供している。リストは2つのセクションに分かれており、最初のセクション(Ⅰ)には、Great Booksに収録されている作品の著者によって書かれた別の作品が、 次のセクション(Ⅱ)には、Great Booksに作品が一つも収録されていない著者によって書かれた作品がリストされている。どちらも著者は年代順に並べられている。これを読めば、1990年までに出版された作品を含め、追加文献リストを可能な限り最新のものにするためにあらゆる努力がなされたということが分かるはずだ。対照的に、Great Booksに収録されている作品は一番最近ものでも1950年前後のものだ(この理由については「The Great Conversation」という本で説明している)。

 読者の便宜のために、102の各アイデア=大項目の章における「追加文献リスト」に載っている著者と作品は、2巻の「追加文献総合リスト」(Biography of Additional Readings)に、アルファベット順で一まとめにリストされている。またここには、著者の氏名、本の正式なタイトル、発行日が記載されている。

 2巻の末尾の、アルファベット順に並べられたグロッサリーである「用語目録」(Inventory of Terms)は、強調してもしきれない。アイデア=大項目は「天使」(Angel)から「世界」(World)までアルファベット順に並べられているので、それらのうち特定のアイデア=大項目だけを勉強したい読者は、単純に各アイデア=大項目を見ればよい。しかし、アイデア=大項目の数はわずか102である。それに比べて用語目録には、他に約2000の概念が載っている。もし読者が、たとえば帝国主義生態学量子力学、ジェネレーション・ギャップなど、アイデア=大項目として登録されていない事柄を研究したいと考えているとして、各アイデア=大項目の「トピックの見取り図」(つまりトピック=小項目一覧)を何百個も熟読する忍耐力を持っている人はほとんどいないはずだ。そこで最短のアプローチは、「用語目録」をめくることだ。「用語目録」を見れば、帝国主義について学びたい人は、それに関連する半ダース以上のアイデア=大項目を参照することができる。

 102のアイデア=大項目として登録されている語もまた「用語目録」に用語として含まれているため、「用語目録」は、各アイデア=大項目の研究の可能性を拡大する上でも非常に役に立つ。いずれのアイデア=大項目も、孤立し、自己完結した存在としてあるわけではない。それらの間には多くの相互関係がある(たとえば、市民、憲法、民主主義、政府、国家の間に、あるいは神、予言、宗教、罪、神学の間に)。「用語目録」を参照することで、読者はあるアイデアがどれほど広範囲であるかをすぐに知ることができる。したがって用語目録は、アイデア=大項目について研究可能な文脈を確認するのに役立つ。

 

シントピコンの使用法

 シントピコンをしっかり読み込めば、さまざまな使用法があるということが分かるだろう。最も単純なレベルでは、各アイデア=大項目の中の1つのトピック=小項目(例えば、「83科学」[2a科学と宗教の関係])を取り上げ、そのトピックについての参照指示を辿っていくができる。関心の幅が少し広い読者なら、いくつかのサブトピックをぶら下げているメイントピックについて調べるかもしれない。「47自由」[1自然な自由と政治的な自由]が良い例だろう。このメイントピックには8つのサブトピックがぶら下がっている。アイデア=大項目を構成するトピック=小項目全てについての参照指示を辿るほどに熱心な読者もいるかもしれない。

 シントピコン索引に突き進む準備は万端だという読者は、作業しようとしているアイデア=大項目の「トピックの見取り図」を読み込むべきである。「トピックの見取り図」は、「導入エッセイ」のすぐ後ろに載せてある。「トピックの見取り図」全体をよく読み込めば、自分が適切なアイデア=大項目の中で的確なトピック=小項目を選んでいるという自信が持てるはずだ。

 どのトピック=小項目を見ればよいか分からない場合はどうなるだろうか? ここでは「用語目録」が役に立つ。Great Booksに収録されている作品が、時事的な話題について何を言っているのか知りたいと思ったとしよう。例えば「環境」(Environment)について。「環境」は102のアイデア=大項目には入っていないので、最初に用語目録を見てみる必要がある。

 用語目録で「環境」という単語を見つけた読者は、7個のアイデア=大項目が参照指示されているのを目にするだろう。中には各アイデア=大項目の中の複数のトピック=小項目が参照指示されているものもある。どれが調べたい事柄に最も適したものだろうか? 確認する唯一つの方法は、参照指示されている各アイデア=大項目の「トピックの見取り図」やトピック=小項目自体を直接確認することだ。関連しそうな各アイデア=大項目の「トピックの見取り図」を見てみると、研究に最も役立ちそうなのは「48生と死」[4生態系における生物学的経済]だということが分かる。これは、環境に関連するトピック=小項目の中でも、扱う範囲が最も広いものだ。しかし、参照指示されている他のアイデア=大項目の「トピックの見取り図」を調べることは時間の無駄ではない。そこで見つかるトピックは、環境に関する研究がどのように行われうるかを示している。読者は、さまざまなアイデア=大項目の中で、問題がどのように扱われているのかを確かめることで、問題についてより深い視点を得ることができる。

 「用語目録」は、同義語や、共通の起源を持つ言葉を見つけるのにも役立つ。例えば、「生態」(Ecology)という言葉は、「環境」(Environment)と密接な関係を持っている。実際に用語目録で「生態」の項を見てみると、そこで参照指示されているアイデア=大項目やトピック=小項目たちは、「環境」の項で参照指示されていたものとほぼ同じである。「生と死」[4生態系の生物学的経済]は両方で引用されているので、このことからも環境について研究を始めるにあたって最初に見ておくべきトピックであると結論づけることができる。

 以上見てきたように、環境について研究するにあたり参照するべきアイデア=大項目、トピック=小項目を探すことは有益である。その作業によって、一つの問題がどれほど多様な側面を持っているか、そしてその問題の扱われうる文脈がどれほど多様かを知ることができる。例えば、「用語目録」で「教育」の項を見てみよう。約20のアイデア=大項目と更に多くのトピック=小項目が並んでいる。教育そのものをアイデアとして研究できることは明らかだが、「市民権のための教育」、「民主主義における教育の役割」、「法の教育的機能」などの、特定の観点の下で研究することも可能である。

 文脈を狭めることができるなら、広げることもまた可能だ。真に野心的な研究者は、取り組むアイデアを階層的に整理したいと思うかもしれない。国家を最上位のテーマとすると、貴族制、市民、憲法、民主制、政府、法、自由、君主制、寡頭制、罰、奴隷制、暴政と専制戦争と平和、富、などのアイデアが研究の対象となる。国家などの広い概念や、あるいはより狭い概念を研究した後、読者は個々のアイデア=大項目の「相互参照」を参照したくなるだろう。「相互参照」は、他のアイデア=大項目の関連するトピック=小項目を参照指示している。

 

シントピコンの使用例

 研究したいトピックは環境に決まったので、「48生と死」[4生態系における生物学的経済]を見つけるために、「48生と死」の「シントピコン索引」に目を向けよう。そこには、巻、著者、ページ番号による参照指示が示されている。このトピック=小項目(「48生と死」[4生態系における生物学的経済])の場合だと、参照指示されているのは紀元前5世紀のヘロドトスから、アントン・チェーホフ、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド、C.H.ウォディントンまで。このトピックの全ての参照指示を辿るならば、私たちが教えを受けることになるのは、ヘロドトスプラトンアリストテレスヒポクラテス、ガレノス、ルクレティウスプロティノス、アクィナス、ガリレオパスカルモンテスキュー、ルソー、アダム・スミス、カント、メルヴィルダーウィンイプセンホワイトヘッド、ウォディントン、チェーホフである。

 参照指示された箇所を読んだ後は、新しい情報を得るために「相互参照」を見るべきである。「48生と死」において環境に関連する相互参照は1つだけで、「2動物」[11b生物とその環境との関係]である。このトピック=小項目について参照指示されている作品は、「48生と死」[4生態系における生物学的経済]で得られた作品の情報に追加される。

 上記のような手順で、「国家」とそれに関するアイデアについて、より野心的な研究を行ったとしよう。上に示したアイデア=大項目(貴族制、市民、憲法、民主制、政府、法、自由、君主制、寡頭制、罰、奴隷制、暴政と専制戦争と平和、富)について全ての参照指示を辿ったとしても、まだまだ多くの資料が見つかる。「90国家」の章における「相互参照」では、国家に関連する主要なアイデア=大項目(貴族制、民主制、寡頭制など)とは言えないアイデア=大項目に含まれる、多くのトピック=小項目を参照指示している。例えば、「教育」8a、「家族」2a-2c、「歴史」4a(3)、「労働」5-5d、「言語」1、「進歩」4b、「宗教」4-4b、「科学」1b(2)などである。

 以上のことから、Great Booksが、純粋に楽しむための読書から、詳細かつ徹底した研究まで、実質的にあらゆる種類の使い方に開かれていることが分かるだろう。

 

各アイデア=大項目の章における「シントピコン索引」(References)の、先頭につている説明

 

各アイデア=大項目の章にいちいち書かれているものだが、例えば

「Great Books of the Western World 1 The Syntopiocn:Ⅰ」Second Edition,  Encyclopædia Britannica, Inc. p11

 

 参照箇所は、巻番号(太字)、著者名、ページによって指示している。聖書の参照箇所は、欽定訳聖書における書、章、節によって指示している。「esp」という記号が付されている場合は、参照箇所全体の1つ以上の特に関連する部分に読者の注意を促している。「passim」という記号が付されている場合は、参照指示された作品や文章で、トピック=小項目について継続的にではなく断続的に議論されている(トピック=小項目についての言及が散らばっている)ことを意味する。作品全体がトピック=小項目に関連している場合は、作品全体を参照指示している。シントピコンの使用に関する全体的な手引きについては、「序文」(Introduction)を参照されたい。

 

「追加文献総合リスト」(Bibliography of Additional Readings)の先頭についている説明

「Great Books of the Western World 2 The Syntopicon:Ⅱ」Second Edition, Encyclopædia Britannica, Inc.  p909

 

 「追加文献総合リスト」は、102のアイデア=大項目の章の末尾に付されている「追加文献リスト」に並べられた全ての本や論説に関する情報を一ヵ所にまとめたリストである。

 この総合リストでは、著者がアルファベット順に並べられている。著者不明(anonymous)の作品は、(レオニド・)アンドレーエフAndreyevと(ジャン・)アヌイAnouilhの間の「著者不明」(anonymous)という項にリストされている。

 各アイデア=大項目の章における「追加文献リスト」では、著者の姓しか記載されていないが(同一の姓を区別するためにイニシャルが付いている場合もある)、「追加文献総合リスト」では、著者名、発行年、正式タイトルが示されている。

 作品のタイトルは、著者名の下にアルファベット順に並べられており、編集者または翻訳者の名前、記載されている版の刊行地と刊行年、原書の刊行地と刊行年、作品が翻訳の場合は原書のタイトル、などの情報が(入手できた範囲で)示されている。

 本の正式なタイトルと、各アイデア=大項目の章における「追加文献」に示した短縮版タイトルの最初のアルファベットが異なる場合は、短縮版のタイトルを[ ]で表示し、その後ろに正式タイトルを表記している。例えば、ダニエル・デフォー(Daniel Defoe)の「モル・フランダーズ」(Moll Flanders)は、「追加文献総合リスト」においては

 [Moll Flanders] The Fortunes and Misfortunes of the Famous Moll Flanders.

 という形で表記されている。このような場合、アルファベット順は[ ]で囲まれたタイトルによって決定される。この[ ]で囲まれた短縮版タイトルはまた、各アイデア=大項目の章における「追加文献リスト」に表示されるタイトルでもある。

 「追加文献リスト」でのタイトルの示し方の違いは、非英語圏の作品が英語の翻訳で読めるかどうかを示している。翻訳が存在しなかったり読めなかったりする場合、タイトルは元の言語のみで(つまり原書のタイトルのみが)表記される。作品が翻訳されている場合は、英語のタイトルで表記されるが、原書のタイトルと併せて表記​​されていることもある。この規則の例外は、ダンテの「新生」(La Vita Nuova)や、マロリーの「アーサー王の死」(Le morte d’Arthur)など、英語に翻訳されてはいるが、原書のタイトルが一般的な呼称になっている作品である。

 「参考文献総合リスト」では、翻訳作品のタイトルが、各アイデア=大項目の章における「追加文献リスト」での表記に従って、アルファベット順に並べられている。その作品が「追加文献リスト」に元の(原語の)タイトルで表記されている場合、「追加文献総合リスト」にもその原語タイトルでアルファベット順に並べられる。その作品が「追加文献リスト」に英訳のタイトルで表記されている場合、または単にその表記が用いられている場合でも、作品は英訳のタイトルに従ってアルファベット順に並べられている。このような場合、元のタイトルが( )内に表記されていることがある。

 「追加文献リスト」の詳細については、1巻の序文(Introduction)を参照されたい。

補足:ちなみに英訳もバージョンが複数あるから好きに読んでくれ、というものについては”The above work is available in many popular editions.”と書かれている。

 

「用語目録」(Inventory of Terms)の先頭にある説明

「Great Books of the Western World 2 The Syntopicon:Ⅱ」Second Edition, Encyclopædia Britannica, Inc.  p999

 

 「用語目録」は、シントピコンをレファレンスツールとして使いやすくするために考案されたものである。この「用語目録」は、アルファベット順に並べられた用語たちによって、102のアイデア=大項目における関連トピック=小項目に我々を導く。それによって私たちは、偉大なる会話(Great Conversation)のテーマを構成する3000のトピック=小項目について、Great Booksの各収録作品に記された見解を見つけることができる。102のアイデア=大項目もまた、「用語目録」に用語として含まれている。102のアイデア=大項目について、そのアイデア=大項目の章以外の章でも言及されているからである。

 補足:例えば「天使」については、「1天使」の章だけでなく、「23永遠」の章でも言及されている、というように。

 関連するトピック=小項目の文脈の中で特定のトピック=小項目を見つけるために、読者はまず、そのトピック=小項目の属しているアイデア=大項目の章の、「トピックの見取り図」(Outline of Topics)に目を向けなければならない。各章の「トピックの見取り図」は、「シントピコン索引」のすぐ前に記載されている。「シントピコン索引」には、そのトピック=小項目と関連するGreat Books収録作品内の文章への参照指示が並べられている。

 「用語目録」の各用語は、その用語が重要な構成要素となっているアイデア=大項目とトピック=小項目を参照指示している。用語は単語やフレーズであり、太字になっている。アイデア=大項目全体を参照指示する場合は、アイデア=大項目が章番号と共に表記されている(例えば、「CH 4:芸術」という形で)。トピック=小項目を参照指示する場合は、そのトピック=小項目が属するアイデア=大項目の名前、と、トピック=小項目の番号で示している(たとえば、[芸術5a]という形で)。「用語目録」内の他の用語への相互参照がある場合は、太字で示している。

 それぞれの用語において、参照指示されているアイデア=大項目とトピック=小項目は、アルファベット順に並べられている。ただし、アイデア=大項目全体を参照する場合は、常に各トピック=小項目の前に置かれている。一部の用語において、参照指示は、重要なものと副次的なものという、2つのグループに分けられている。重要な参照指示はスラッシュで副次的な参照指示と区切られており、副次的な参照指示は「see also」(も見よ、をも見よ)の後ろに並んでいる。

 補足:see 重要な項目/ see also 副次的な項目、という感じ。

 一部の用語には、その語の意味する範囲を示すための但し書きを( )で添えてある。例えば、腐敗Corruption(moral)は道徳的、倫理的な意味での腐敗について、腐敗Corruption(phys.)は、生物学的な意味での腐敗や分解について、腐敗Corruption(pol.)は政治の領域における権力の乱用についての参照指示を示している。

 「倫理学」や「数学」など、特定の科学や学問分野を示す用語は、その科学・学問自体の性質について扱うトピック=小項目や、その科学の主題に関するトピック=小項目に関連している。このような科学・学問分野を示す用語に添えられている、「の科学」(science of)や「の主題」(subject matter of)という言葉は、その用語のどのような側面に関連するトピック=小項目が参照指示されているかを示している。

補足:例えば「文法学」(Grammar)について見てみると、[Grammar, science of]の項では、学問分野としての文法学についての言及しているトピック=小項目が参照指示されており、[Grammar, subject matter of]の項では、文法学の内容について言及しているトピック=小項目が参照指示されている。

 フレーズは、単一の意味を示したり、その意味を狭めたりするために必要になる。例えば、「矛盾律」(Law of contradiction)や、「軍事戦略と戦術」(Military strategy and tactics)などである。同じ目的で、ある用語が関連する単語や類似の単語とペアになっていることもある。たとえば、「現象と実在」 (Appearance and reality)、「参政権や選挙権」(Franchise or suffrage)、「歴史、歴史家」(History, historian)などである。

 

 「用語目録」の使い方の詳細については、1巻の序文(Introduction)を参照されたい。