『独学大全』は分厚い。よくもまぁこれだけ独学に関する技法を集めたものだと驚いた人も多いだろう。
しかし読書猿ブログを読んだことのある人ならば、別種の感慨を抱いたかもしれない。独学についての情報をあれほど惜しげもなく披露していた人が、その持てる知見を55個の技法にまとめて700ページ余りに圧縮したのか、人間業じゃない(神業ならぬ猿業?)、と。
ところで、圧縮されたものは解凍できるはずだ。
ということで、
・読書猿氏の前著である『アイデア大全』、『問題解決大全』の各技法
・読書猿氏の運営しているブログ「読書猿Classic: between / beyond readers」の各記事
・読書猿氏が発行していた(現在は著書刊行時のみ記念号を発行)メルマガをまとめた「書評マガジン 読書猿」の各文章
・読書猿氏がネット上で公開している書き物を集めた「くるくる財産目録」の各文章
のうち、『独学大全』に関連するものを参照指示形式でまとめてみた。 *2
語感がいいので「解凍してみた」と言っているが、実際は『独学大全』を地図にして読書猿氏の世界を案内するようなものになっていると思う(なっているといいな)。
完璧なものとは当然思っていないし、それ以上に個人的な好みによるセレクションがキツく働いているので、どれだけ読者の皆様のお役に立てるかは分からない。
それでも、『独学大全』に登場したあの技法についてもうちょっと知りたいとか、あの情報についてもうちょっと知りたい、といった需要に、ある程度は応えられていると思う(応えているのは筆者でなく読書猿氏だが)。
———総合目次——— ワンクリックで飛べます
- 著者
- 無知くんと親父さんの対話0 無知をどうにかしたいんです
- 序文 学ぶことをあきらめられなかったすべての人へ
- 第1部 なぜ学ぶのかに立ち返ろう
- 〈独学の足場を作るために〉
- 第1章 志を立てる
- 第2章 目標を描く
- 第3章 動機付けを高める
- 第4章 時間を確保する
- 無知くんと親父さんの対話4 何を捨て、何を選ぶか
- 技法6 自分も知らない自分の行動を知る「行動記録表」
- 技法7 クズ時間を生まれ変わらせる錬金術「グレー時間クレンジング」
- 技法8 打ち込むためにトマトを回せ「ポモドーロ・テクニック」
- 第5章 継続する
- 無知くんと親父さんの対話5 挫折する人が考えること
- 技法9 怠けることに失敗する「逆説プランニング」
- 技法10 日課を習慣の苗床にする「習慣レバレッジ」
- 技法11 やめられない、続かないを資源にする「行動デザインシート」
- 技法12 独学の進捗と現在地を知る「ラーニングログ」
- 第6章 環境を作る
- コラム 金のない独学者に何ができるか
- 第2部 何を学べばよいかを見つけよう
- 〈何を学ぶか自分で決める〉
- 第7章 知りたいことを発見する
- 第8章 資料を探し出す
- 無知くんと親父さんの対話8 「ググる」以外の武器を手に入れよう
- 技法19 思い付きの検索を卒業する「検索語みがき」
- 技法20 知の分類の航海術「シネクドキ探索」
- 技法21 巨人の肩によじのぼる「文献たぐりよせ」
- 技法22 調べものの航海日誌「リサーチログ」
- 第9章 知識への扉を使う
- 無知くんと親父さんの対話9 古典はあなたのために書かれていない
- 技法の前に 運に頼らない本の選び方
- 技法23 第1のレファレンスツール「事典」可能性としての博識
- 技法24 第2のレファレンスツール「書誌」調査の達人からの贈り物
- 技法25 第3のレファレンスツール「教科書」入門書・事典・書誌を兼ねた独学者の友
- 技法26 欲しい書物と出会う技術「書籍探索」
- 技法27 知の最前線に向かう「雑誌記事(論文)調査」
- コラム 知のライフサイクル
- 第10章 集めた資料を整理する
- 無知くんと親父さんの対話10 最速の素人になる
- 技法の前に 点の読書から線の読書、面の読書へ
- 技法28 多くの文献を一望化する「目次マトリクス」
- 技法29 文献のネットワークを掌握する「引用マトリクス」
- 技法30 文献の群れを貫通して読む「要素マトリクス」
- 第11章 情報を吟味する
- 第3部 どのように学べばよいかを知ろう
- 〈学び方を学ぶこと〉
- 第12章 読む
- 無知くんと親父さんの対話12 様々な読み方で再読する
- 速読 Rapid Reading
- 技法34 知らずに使っている最速の読書法「転読Flipping」
- 技法35 必要なものだけを読み取る「掬読Skimming」
- 技法36 文献と対話する「問読Q&A Reading」
- 技法37 決まった時間で読み終える「限読Timed Reading」
- 平読 Plain Reading
- 技法38 読書技術の静かな革命「黙読Silent Reading」
- 技法39 身体に刻む読書の原初形態「音読Reading Aloud」
- 技法40 読み手を導く読書の手すり「指読Pointing Reading」
- 精読 Close Reading
- 技法41 読むことを考えることに接続する「刻読Marked Reading」
- 技法42 精緻に読むことに引き込む読書の補助輪「段落要約Paragraph Summarizing」
- 技法43 難所を越えるための認知資源を調達する「筆写Scribing」
- 技法44 すべての読書技術で挑む精読の到達点「注釈Annotating」
- 技法45 思考訓練としての訳読「鈴木式6分割ノート」
- 技法46 逆境を乗り越える要約注釈術「レーニンノート」
- 第13章 覚える
- 無知くんと親父さんの対話13 記憶の術(アート)よりマネジメント
- 技法47 記憶法のコーディネートでメタ記憶を鍛える「記憶法マッチング」
- 技法48 記憶障害の臨床でも用いられる文章記憶法「PQRST法」
- 技法49 学習前後に描くことで準備する/定着する「プレマップ&ポストマップ」
- 技法50 古代ギリシア発祥のイメージ技法「記憶術(ニーモニクス)」
- 技法51 復習をモジュール化する記憶マネジメント法「35ミニッツ・モジュール」
- 第14章 わからないを克服する
- 無知くんと親父さんの対話14 「わからない」と共に旅をする
- 技法52 思考の過程を声にする「シンクアラウドThink Aloud」
- 技法53 わからなくても迷わない「わからないルートマップ」
- 技法54 解いた自分を資源とする「違う解き方」
- 第15章 自分の独学法を生み出す
———目次おわり———
はじめ~第一部おわりまではこちら
第二部はこちら
第三部はこちら
第四部から終わりまではこちら
*1:書いておいてなんだが、これは誤解を招く表現で、読書猿ブログその他でおなじみの情報も、扱われていない情報も『独学大全』には入っているし、逆に削ぎ落された情報もたくさんある。また本来別々のところで扱われていた情報が結びつけられていたりもする。何よりそれらの情報が二重過程論をベースに説明されているところが『独学大全』の真骨頂である。当たり前すぎて言うのも馬鹿らしいが、ここに挙がってる記事を全て読めば『独学大全』は読まなくていい、なんていうのは大間違いである。
*2:・「つかれたアタマの道具箱」をはじめとする、催眠や認知行動療法関連の情報をまとめた「psych-toolbox」 ・氏のTwitterでの発言、及びTwitterへの匿名質問の回答をまとめた「読書猿マシュマロ全質問回答 - marshmallow-rm」、またその一部をまとめた「マシュマロで1ヶ月間質問に答えて紹介した書物をまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers」、「マシュマロでさらに2ヶ月間質問に答えて紹介した書物をまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers」 は量が膨大すぎるので対象には含めなかった。「くるくる財産目録」で現在リンク切れになっているものなども同様。
更に、読書猿メルマガは現在までのところ146号まで発行されているが、「書評マガジン 読書猿」に収められているのは134号までなので、135号以降のメルマガを参照指示する場合、リンクは貼っていない。
以上が読書猿氏の世界の全てというわけではないが、『独学大全』と結びつけるならこのあたりが無難だろうということで。